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外資IT面接官経験者が解説:TOEICはどこまで必要?本当に評価される英語力と鍛え方

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GAFAM のような外資IT企業に転職したいけれど、「TOEICの点数ってどれくらい必要?」と不安に思う人は多いと思います。私も外資IT企業の面接官として数多くの採用プロセスに立ち会う中で、英語力が合否を左右する場面を何度も見てきました。

ただ、その「英語力」は TOEIC の点数とは必ずしも一致しません。書類段階では TOEIC も参考情報として扱われることはありますが、面接で評価されるのは点数ではなく 「英語で自分の職務経験や魅力を説明できる力」 です。だからこそ、TOEICは英語力の土台を築くツールとして活用し、適切なタイミングで英会話スキルの向上へシフトすることが重要です。

この記事では、外資IT企業で実際に採用を担当してきた立場から、外資ITの採用プロセスにおけるTOEICの位置づけと、選考突破につながる効果的なTOEIC活用方法を紹介します。あなたのキャリアを前に進めるヒントになれば嬉しいです。

採用プロセス全体でのTOEICの本当の位置づけ ― 書類と面接で何が違うのか

外資IT企業の採用プロセス(ソーシング・スクリーニング・面接)を示したビジネスイラスト。履歴書の確認と面接の流れをわかりやすく表現した図。

外資ITの採用では、書類段階と面接段階で TOEIC が果たす役割がまったく異なります。
まずは採用フロー全体を俯瞰しながら、「どの場面で TOEIC がどれくらい効くのか」を整理します。

外資ITの採用フローと、HR・業務部門の役割

外資系企業では、実質的に採用の意思決定を握るのは「業務部門」です。募集職種・人数の決定、JD (Job Description: 職務記述書) の作成、面接の実施などは全て業務部門が担当します。

一方で、HR (人事)は採用ガイドラインの整備、採用サイトへの JD の掲載、候補者探し(ソーシング)、面接日程調整等を支援します。

採用プロセスは概ね以下の流れです:

  1. 業務部門が募集職種と人数を決定
  2. 業務部門がJD を作成し、HR が自社採用サイトに掲載
  3. 自然な応募が少ない場合、HR が人材発掘ツール(例: LinkedIn) を使い採用候補者探し(検索条件は業務部門が共有)
  4. 履歴書スクリーニング
  5. 面接(日本 + 海外メンバー)3 – 5 回程度
  6. オファー判断

この中で TOEIC が関係するのは、実質 ステップ 3・4 のみ です。つまり、採用全体における影響度は限定的 ということです。

候補者探しと書類スクリーニングでは、TOEIC が「補助的に」使われることもある

候補者が多すぎる場合、TOEICは「ふるいにかける補助指標」として利用されることがあります。ただし、あくまで最重要なのは職務経歴やスキルであり、TOEIC は補助指標です。

まずは、ステップ 3 を見ましょう。ここで TOEIC が使われるのは、人材発掘ツールで大量の候補者が出る場合です。人材発掘ツールでは複数の検索条件が設定でき、「Project Management」「Cloud」など職務・スキルに関連する条件で絞り込み検索します。その際に 200 – 300件候補者がいる場合には、TOEIC で絞ることもあります。

実際にHR から「TOEICどうします?」と聞かれ、「700点未満は一旦外しましょうか」と伝えて候補者を絞った経験もあります。何しろ HR も複数の職種のソーシングを担当しており、あまりにも候補が多いと丁寧にレジェメ (職務経歴書) を見れないからです。

とはいえ、外資企業が使う海外製ツールでは そもそも TOEIC で検索を絞る機能がないことも多く、TOEIC がフィルターとして使われる場面は一般的ではありません (日系ツールでは絞れます)。

また、ステップ 4 の書類審査でも重視されるのは職務経験です。TOEIC は参考程度であり、点数の真偽を確認する手段もないため、「英語は面接で見れば良い」という運用がほとんどです。

なお、JD に TOEIC の点数が書いてある場合は重要ですので、その際はぜひアピールしてください。

面接段階では TOEIC の点数は考慮されず、実際に会話できるかで判断される

書類段階と異なり、面接では英語力を「直接会話で確認できる」ため、TOEIC の役割は完全に消えます。また、海外の面接官はそもそも TOEIC を知らないことすらあるので、TOEIC でのアピールは難しいです。

面接で重視されるのは、以下のような「実務会話力」です:

  • 英語で業務経験を説明できるか
  • 面接官の質問を正しく理解し、自然に返せるか
  • ロジカルにわかりやすく話せるか

TOEIC900点台でも会話が弱ければ落ちるのを何度も見ていますし、TOEIC未受験でも会話が強ければ合格します。

最終的に重視されるのは業務経験・人間性・コミュニケーション力が募集職種の期待値を超えているかであり、TOEICは面接評価から完全に外れます。

では、TOEIC自体が全く意味がないのかというと、そうではありません。むしろ、外資ITを目指すなら「土台づくりのツール」として非常に役立ちます。ここからは、TOEICと英会話の効果的な使い分けについて説明します。

TOEICは「土台づくり」のツール。900点を追うより英会話に切り替える方が外資ITの面接には有効な理由

外資ITの面接対策として、TOEIC学習から英会話トレーニングへ移行する様子を描いたイラスト

これまで説明した通り、面接では「英語での実務会話能力」を評価されます。そのため、TOEIC である程度の点数を取れるようになったら、英語での「会話力」 を伸ばすほうが採用通過への効果がはるかに大きいです。

TOEIC が 750〜800に達したら、英会話の訓練に時間を使うべき

前のセクションで話した通り、海外の面接官は TOEIC を知らない可能性があり、かつ、実際に英語で会話ができるかを重視します。そのため、TOEIC の点数を極限まで伸ばす必要はありません。

個人的には、TOEIC が 750 – 800 点 (もしくは Job Description に記載の基準値)あたりを超えたら、900 点を目指すよりも英会話に時間を移した方が費用対効果が高いです。

一方で、TOEIC にも以下のようなメリットはあります。

  • 自分のリスニング・リーディング力を数値で可視化してくれる。
  • 対策講座・教材が多いので、力を伸ばしやすい。

いきなり英会話を始めると講師から “Your English is very good” とお世辞を言われ、自分の実力がわからないです。また、講師側が気を遣って会話を続けるので、実力が微妙でも会話が続いてしまいます。そのため、まずは TOEIC で実力を数値化。750 – 800 未満だと単語、文法、リスニング力に致命的な弱点がありますので、それを改善した上で英会話に臨むのがおすすめなのです。

もちろん、お金と時間に余裕があれば両方並行しても問題ないですが、業務と英語学習を並行するだけでも忙しいと思うので、TOEIC -> 英会話という順番をお勧めしています。

英会話では IT 業界のニュースや自分のプロジェクトを話題にしよう

たいていのオンライン英会話サービスでは、こちら側で進め方を指定することができます。そこでお勧めなのが、IT業界の最新ニュースや自分のプロジェクトについて議論することです。なお、申し込んだ英会話サービスに秘密保持規約がない場合には、自分のプロジェクトの話は避けましょう。

これらの話題を議論するメリットは以下のとおりです。

  • TOEIC には出てこない IT 業界用語・英単語を使えるようになる
  • 面接中に聞かれる「自分の経験・成果」を英語で話す練習になる
  • 講師からフィードバックをもらうことで、伝え方の改善方法がわかる

また、ある程度慣れてきたら講師に面接に頻出の質問 (会社による)を出してもらうようにしましょう。例えば:

  • 「あなたがリードしたプロジェクトのうち、最も成果を出したプロジェクトを説明してください」
  • 「困難だった状況と、それを乗り越えた工夫を教えてください」

こうした話を 英語で自然に説明できる ことが強い武器になります。ここができるかどうかで、面接官の印象は大きく変わります。

STAR 法などテンプレ構文で英会話を楽にする

ネイティブでない英語の会話は日本語より伝えづらく、特に緊張すると長く話しがちです。慣れない人がダラダラと長く話してしまうと、面接官には「話が冗長」という印象を与えます。また、面接官が質問したかったことを聞ききれずに時間切れになることも。

そのため、意思疎通をスムーズにするために STAR 法などを活用しましょう。STAR法とは Situation (状況)、Task (課題)、Action (行動)、Result (結果) の順に説明する方法で、結論が伝わりやすく、面接官にも理解してもらいやすい構成です。

こういったテンプレを使って練習することで自分のリズムも作れますし、面接官目線では短時間で理解がしやすいので助かります。

また、履歴書の職務経験欄を STAR 法で書いている人も見たことがあるのですが、沢山の履歴書を読まないといけない面接官としては、簡潔にまとまっていて好印象でした。

想定外の質問に耐えられる練習が必須

面接では会社を問わずよく聞かれる質問があります。例えば、「なぜ弊社のこのポジションに応募されたのでしょうか?」「仕事で直面した困難な場面と、それにアプローチした方法を教えてください」などです。

こういったものは転職系サイトやブログに良く掲載されているので、みなさん良く練習されています。また、よく練習しておくべきです。

ただし、特定の質問だけ流暢に答えられ、それ以外の質問がきた際に言い淀んでしまうと、逆に印象が悪くなります。特にオンライン面接では自動字幕を読むような姿勢はすぐ伝わります。「理解できていない」と判断されるため、どんな質問にも自力で返せる練習が有効です。

そのため、オンライン英会話では 「回答を掘り下げるために追加の質問をする」、「よく就活で聞かれる質問をランダムに出す」ように講師にお願いして練習しておくと非常に効果的です。こうした揺さぶりに強くなる練習が面接突破に結びつきます。

まとめ:外資 IT の採用でTOEICが与える影響は限定的。ただし英語力の「土台づくり」としては有用

外資IT企業の採用において、TOEICが評価に大きく影響する場面は限られています。ソーシングや書類段階では、候補者が多すぎるときに 「補助的なフィルター」として使われることがありますが、最終判断では職務経験の方が重視されます。

また、面接では実際の会話で英語力を確認できるため、TOEIC の点数が判断材料になることはありません。必要なのは「英語で業務経験をわかりやすく説明できる力」です。

とはいえ、TOEICが無意味なわけではありません。基礎力を高め、自分の現在地を客観的に把握するツールとして非常に役立ちます。特に、英会話に移る前の「土台づくり」としては優秀です。

TOEICは「英語力を証明するツール」ではなく、「英語力を育てるツール」。採用で勝つのは、点数ではなく 「伝える力」 です。

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