高配当株投資はキャッシュフロー (お小遣い) の増える素敵な投資ですが、投資適格な銘柄選びが難しくて悩んだことはありませんか?
私も色々迷いましたが、数年間の試行錯誤と勉強を通して効率的・効果的な選定方法を見つけるに至りました。
そこで今回は、3 ステップで投資適格企業を選定・投資する方法を紹介します。
なお、私もまだまだ修行中なので今後も分析方針や投資方針は変更する可能性があります。また、投資は自己責任という前提のもと、ご自身の判断で本コンテンツをご活用ください。
優良高配当株の選定方針
高配当株は世の中に沢山ありますが、業績が悪くて「高配当でなければ誰も買わない」ような企業も存在します。
そんな地雷銘柄を避け、今後も継続的に成長し配当を支払える優良企業を選定することが大切です。
ただし、日本だけでも約4,000社の上場企業があるので、効率的・効果的に選定・投資したいです。
そのため、私は 3 つの段階を踏んでいます。
- Step 13 つの必須条件でサッと選別
足切りのようなイメージで、定量分析を短時間で済ませます。
- Step 26つの望ましい条件で分析し、投資適格企業を決定
Step 1 合格企業のみじっくり分析。
追加の定量分析 + 企業の投資家向けページを読むなどの訂正分析もします。
- Step 32 つの買う条件が整ったタイミングで投資適格企業を購入
Step 1 & 2 を合格した投資適格企業を適切なタイミングで買います。
このように 3 段階を踏むことで効率的・効果的に高配当株を選定し投資しています。それでは、詳細を見ていきましょう。
3 つの必須条件
まずは必須条件を説明します。この条件を満たさない場合、投資対象からしばらく外します。
ざっくり言うと、配当金を払えて、稼げて、蓄えられる会社です。
配当金が上昇傾向
高配当株投資では「長期的に配当金収入を得る」ことを重視します。
そのため、配当金が上昇傾向にあることは最重要事項です。少なくとも過去5年程度の配当金推移を確認してみましょう。
利益が上昇傾向
利益は企業が存続し配当金を支払うための大前提です。
企業の収益力を測定するには、EPS (Earnings Per Share = 1株あたり純利益) を使うと便利です。
長期的に EPS が上昇傾向か (収益力が上がっているか) を確認してみてください。
EPS の計算方法
EPS は下記のように計算します。
EPS = 純利益/発行済み株式数
純利益は売上高から売上原価・販売費等を引いた上で、営業外損益と特別損益を差引後、法人税等を引いた純粋な利益です。
EPS の注意点
EPS は基本的に純利益の増減を表しますが、発行済み株式数が分母のため以下の点に留意しましょう。
- 新株発行した結果 EPS が下がる
- 自社株買いをした結果 EPS が上がる
また、純利益が高い場合にも、営業外損益 (不動産の家賃など) や特別損益 (不動産の売却など) で本業の穴埋めをしている可能性があります。
そのため、複数年の推移を見守り、この後説明する営業キャッシュフローで補足分析しましょう。
資産が上昇傾向
利益が出せることに加えて、借金が少なく貯蓄の多い安定した企業を保有したいですね。
企業の安定性を測定するには BPS (Book-value Per Share = 1株あたり純資産) を使うと便利です。
長期的に BPS が上昇傾向か (純資産が増えていてる) を確認してみてください。
BPS の計算方法
BPS は以下のように計算します。
BPS = 純資産/発行済み株式数
純資産は資産から負債 (借入金など) を引いたものです。
純資産が多ければ、将来の事業投資のための資金や景気の悪いときに補填する資金があるので、より安定します。
そのため、BPS が毎年増加している財務健全な会社を探す際に役立ちます。
6 つの望ましい条件
必須条件を満たした会社のうち、特に望ましい会社を選抜するために使う条件です。
必須条件も望ましい条件も満たしている場合、投資適格高配当株リストに加えます。
本業で稼いでいる
EPS で純利益が増えていることを確認しましたが、本業で稼げているかをダブルチェックします。
なぜなら、純利益がプラスでも営業外損益 (不動産の家賃など) や特別損益 (不動産の売却など) で本業の穴埋めをしている可能性があるからです。
本業で稼げているかを確認するには、現金収支を表す営業キャッシュフローを使うと便利です。
長期的に営業キャッシュフローが上昇傾向かを確認しましょう。
営業キャッシュフローの中身
営業キャッシュフローは営業活動による現金収支を表し、以下のような要素を含みます。
- 営業収入
- 商品等仕入れの費用
- 人件費
営業キャッシュフローがプラスの場合
営業キャッシュフローがプラスであれば、以下のような活動ができます。
- 未来に向けた投資 (新規事業や既存事業の拡大) -> EPS に好影響
- 株主への利益還元 -> 配当金に好影響
高配当株投資の必須条件に良い影響がありそうですね。
営業キャッシュフローがマイナスの場合
営業キャッシュフローがマイナスの場合、以下のような状態になりそうです。
- 資産の売却 -> BPS に悪影響
- 未来向けた投資ができない -> EPS に悪影響
このように、高配当株投資の必須条件に悪影響があるので、営業キャッシュフローがマイナスの会社には注意が必要です。
稼ぎ方が上手い
どうせ持つなら稼ぎ方が上手い会社を保有したいですね。具体的には、商品を高く売りつつコストは低く抑えられる会社です。
例えば、Apple の iPhone は完成度が高く、他のスマホより値段が高くとも多くの人が購入します。人件費が安い国で生産するので、コストも低く抑えています。
このように稼ぎ方が上手い会社を見つけるには営業利益率 (売上に対する利益の割合) という指標を使うと便利です。
業界ごとに標準は異なりますが、5 – 10% を超えていると優良なので確認しましょう。ちなみに、Apple は 30% 程度です。
営業利益率の計算方法
営業利益率 (売上高営業利益率) は以下のように計算します。
営業利益率 (%) = 営業利益/売上高 x 100
営業利益 = 売上高 – 売上原価 – 販売費および一般管理費
売上原価は材料費や生産に費やした製造人件費、販売費は広告宣伝費等、一般管理費は間接部門の人件費や消耗品費などが含まれます。
営業利益率が高い理由
Apple はブランドが確立したスマートフォンを高く売れるので売上高は高いです。
一方で、大量に発注することで材料費を割引してもらい、人件費の安い国で生産することで売上原価を下げることが可能そうです。
ブランドが確立しており、多くの人がレビュー動画などを上げるので宣伝費をかけずとも新製品の発売は周知されるため、販売費を抑えられます。
負債が多すぎない
BPS で純資産 (総資産 – 負債) が増えていることは確認していますが万能ではありません。
もし借金をして値上がりする資産を買い込んでいても、BPS は上昇します。バブルのような状態の時にチェックが不十分になるイメージです。
そんな時には自己資本比率を使って総資産に占める純資産の割合を確認しましょう。業界ごとに水準は異なるので、業界平均と比べてどうかという視点で確認しましょう。
配当を出すときに無理をしていない
何事も無理は続きません。余裕をもって配当を支払っている会社の方が、今後も同じか今以上の配当金を安定して支払ってくれそうです。
余裕を持って配当金を支払っているかを確認するには、配当性向 (純利益のうち配当金にあてた割合) をチェックすると良いです。
配当性向を確認し、無理をしていないか(40 – 50%以下か)・今後配当の伸び代があるかを確認しましょう。
配当性向の計算式
配当性向 (%) = 1株あたりの配当額/1株あたりの当期純利益 x 100
配当性向が高いことによる問題点
仮に1株1,000円の株があって100円/株の当期純利益があるとします。
もし100円/株の配当を出す場合、配当利回りは10%でお得に見えます。
ただし、利益の全てを配当に回している (配当利回り100%) ので貯金できず、今後の成長に向けた投資余力や何か起きた時の備えも不十分です。
また、これ以上配当金を増配する余地もなさそうです。
ただし、コロナ禍のような問題で純利益が下がると、一時的に100%を超えることもあります。そのため、過去5年分を確認してみてください。
株主還元を大事にする
株主還元を大事にする企業は、配当金の継続的増配や自社株買いを積極的に実施する可能性が高いです。
この情報は各社の投資家向けページや決算説明会資料に掲載されているので、”会社名 IR” で検索してみましょう。例えば、NTT の株主還元ページでは以下のような説明をしています。
株主還元の充実は、当社にとって最も重要な経営課題の1つであり、継続的な増配および機動的な自己株式取得の実施を基本的な考え方としております。
2023年度の年間配当額は、13期連続での増配となる1株当たり年間5.0円(対前年度+0.2円)を予定しております。
これまでの配当額は、2003年度比で見れば10倍まで拡大しています。
株主還元を重視しており、連続増配を大事にしていることがわかりますね。
今後の配当傾向にも関わるので、株主還元姿勢は確認するようにしましょう。
自社株買いとは
自社が発行している株を市場から買い戻すことです。
自社株買いは株の価値を上げる
株の価値が上がることを理解するために、EPS (1株あたり純利益) という指標を使いましょう。
EPS = 純利益/発行済み株式数
自社株買いをして消却した場合、発行済み株式数が減るので EPS が大きくなります。つまり、1株あたりの価値が上がります。
また、株式の割高・割安さを表す指標に PER というものがあり、EPSを使って計算します。
PER = 株価/EPS
分母である EPS が増えると PER は小さくなり、現在の価格は割安と判断されます。
例えば、株価1,000 円で EPS 100, PER 10 の株があるとします。自社株買いにより EPS が 110円になると、PER は 9 になり割安と判断されます。
この指標を参考に長期投資している投資家は元の PER 10 の水準まで株を買う可能性があります。その価格は 1,100円であり、既存株主は 100円の含み益を得られます。
自社株買いで配当金を節約できる
自社株買いをすることで、支払う配当金の総額が減ります。
配当性向が下がり無理せず配当を支払っていると判断されやすくなりますし、節約したお金を活用することで将来の営業キャッシュフローを上げたり、自己資本率を上げるために貯蓄することもできます。
自社株買いに関する楽天証券の記事がわかりやすので、より詳しい情報を知りたい方はご参照ください。
不況でも配当金を減らさない
余裕があれば、不況時にも配当金が減っていないかを確認しましょう。
具体的には、以下のようなイベントが起きた年の配当金額を確認しましょう。
- 2008 年 リーマンショック
- 2011 年 東日本大震災
- 2020 年 コロナショック
2 つの買う条件 (トリガー条件)
必須条件と望ましい条件を満たしている場合、投資対象として適格です。
ここでは、投資適格な高配当株を買う適切なタイミングかを判断する条件も紹介します。
配当利回りが4%以上
私の場合、適格な株式の配当利回りが4%を超えた時に購入します。
配当利回りは以下のように計算でき、株価に対する1年間の配当金の割合を示します。
配当利回り (%) = 1株あたりの年間配当金/株価 x 100
仮に配当金が 40 円の株を 1,000円の時に購入すると配当利回りは 4% です。
配当利回りが高い時に購入することで高配当株投資になるので、納得できる利回りで購入しましょう。
株価が価値に対して割安
現在の株価が価値に比べて割安なタイミングで購入します。
この判断のためには PER (Price Earning Ratio), PBR (Price Book-value Ratio) を使うと便利です。
PER = 株価/EPS
PBR = 株価/BPS
PER は株価が1株あたり純利益 (EPS) の何倍かを、PBR は株価が1株あたり純資産の何倍かを示します。
株価だけでも過去の価格と比べて高い・安いことは分かりますが、 企業が利益や資産を増やすことで 1株あたりの価値が上がっているため、価格だけの比較では十分とは言えません。
PER, PBR を使うことで、株の価格が価値に比べて割安・割高かがわかるので、過去 5 年程度の PER, PBR も見て割安なタイミングで購入しましょう。
まとめ
この記事では 3 段階で効率的・効果的に投資適格な高配当株を選定・投資する方法を紹介しました。
この方法で今後も継続的に成長し配当を払い続けられる優良企業を選抜し、投資してみてください。
また、今回紹介した分析方法を短時間で済ませたい方は、関連記事もご覧ください。
なお、私もまだまだ修行中の身なので今後も分析方針や投資方針は変更する可能性があります。また、投資は自己責任という前提のもと、ご自身の判断で本コンテンツをご活用ください。
まとめ記事
本サイトには高配当株投資のメリットと分析方法を解説した3つの記事があります。それらをまとめた記事があるので、全体像を把握しつつ個別記事に飛びたいときに便利です。
関連記事
高配当株投資をするための証券会社選びは関連記事をご参照ください。
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参考書籍
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